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【 序 】  


 その日は、いつにも増して寒い日だった。

 月日が流れても未だ戦火の痕が見受けられる中にその肆(みせ)はあった。再開したばかりで真新しい茶屋は荒んだ景色にあっては些か不似合いではあったが、いずれ近隣の村や街が復興し山林が再び緑に覆われる頃になれば、心穏やかな風景と共に活気も戻るだろうと。肆の女将は敢えてここを再開の場に選んだのだった。

 再開して数日、そんな肆に足を運んだのは雪のように白い短髪を揺らした一人の女性だった。

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